


そして「最高のお酢」へのチャレンジが始まったのだ。
最高のお酢とはなんぞや。
10数年前から幾度も議論が交わされた。
コスト、手間を考えず、妥協せず、迎合することなく、362年の歴史ある醸造家としての信念を主張しうる物を造りたい。
そもそもお酢は、手を加えないのが原点だ。
人は微生物がよりよく働く手伝いをするのみ。
醸造とは、自然の力、天のみの力なのだから。
ただし、最高の原料と最高の環境を整えて─。
そこで、原料から発酵の工程まで、思いつく限りすべての事柄について丹念に吟味を始めた。
原料の米なら、その産地、銘柄、農法、精白度。
水、酒を醸す技、、酵母類、麹菌、酢酸菌、温度、環境…。
選んだのは、地元・兵庫県三田市の合鴨農法に取り組んで10年以上の実績がある三田合鴨稲作会の有機コシヒカリ。
六甲の水、創業以来育んできた酢酸菌。伝統の寒造り。
短時間で大量に発酵させる「連続発酵法」ではなく、昔ながらの槽で発酵させる「静置発酵法※」でゆっくりと発酵させること。
木製の蓋の中でごく自然に酢酸菌が活躍できるよう、寒い日には保温シートを掛けて慈しむ。
1ヶ月半後。静置発酵槽から汲まれたお酢はそれはそれは優美な芳香と、絹のようにたおやかな旨み、驚くばかりに、清楚な酸味をまとっていた。
それはまさしく、醸造家の叡智と、神のみ技の融合。
いま、誇らかに創業者の名『酢屋勘三郎』を冠して世に贈る。